もう発売してからだいぶ経ってしまいましたが、今更ながらLandreaallランドリオール)13巻を読んだので、軽く感想ー。時期は逃したけどいいんだ、好きなんだ。


ACT.63 アカデミー騎士団3
「な…何してんだ?デッキブラシ壊れたぞ」
「壊したの」
(そうだ…DXと六甲がいねーってコトは)(野 放 し か)

さあはじまるぞ…イオンちゃんの三国無双が!
対モンスターという特殊な状況なれどバトルとなったらこの妹ちゃんが黙っているだけなはずはございません。「壊したの」の時の表情が頼もしくも怖すぎる。そりゃフィルもゾッとくるよ。
それはそれとして、イオンのメインウェポンはやっぱり棍になるんですね。人間相手やトレーニングの時は徒手ばかりでしたが、DXとのガチンコ組手や火竜戦では棍を使ってのバトルでしたし、棍を持つのは本気モードな時ってことになるのかな。


「あなたが来たのは運命かも知れないわね…」
「僕はこれ以上関わりたくない!」
「DXの尻尾を踏んづけた報いよレイ」
「さっさと署名して…なんとかして外に持ち出して頂戴」

いつの間にかいなくなってたチューター&寮監、そしてチューターに手渡された公式文書。ウルファネア編との時間のリンクがうかがえますね。このころちょうど竜葵兄さんに猫耳が生え始めてたのか…。
この書面にサインをすることがどれほどの重大事なのかはいまいち把握はできてはいませんが、チューターの狼狽具合から見てもこれはなかなか結構な事態なのだな、くらいには理解はできました。
てかチューターがうろたえてると不思議と楽しいのは何故なんでしょう。もっとこまれ。


ACT.64 アカデミー騎士団4
ルッカフォート! 昇る群れにつられるな、囲まれるぞ!」
「ご、ごめん! 風向きが揺れて…」

あ、あれ!?
「イオンvsモンスター? ハン、何言ってんだい、何百いようと相手になるわけないじゃないかダディ」みたいなイメージを勝手に持ってたんですが、予想外に苦戦、というかやりづらそうな感じに…! 超圧倒的な蹴散らし方になるのかと思ってただけに、この苦戦具合はかなり意外でした。
これは同級生にも指摘されてるように、そしてDXも後に軽く言ってたように、「全体を見る」ということが未熟なためなのでしょうね。自分の周りの敵は倒せるけど、視界外の敵を意識することや味方を護りながら戦うことが苦手、のような。自分自身が部隊内で唯一ほぼ無傷であることはさすがと言う他ないですが、それでもどうにもならない戦いもあるってことか。
しかし本当に地に足のついた強さ描写だよなあ…。いくらイオンやDXが強いと言っても、達人や大群や竜に一人で向かえるような強さではないわけで。個人の武力で何かを根本解決できた記憶がないよ。


(私は犬とおんなじ!)
(さっきみたいなやり方じゃダメなんだ、一人で戦っても…)
(みんなを守る力にはならない)

ほう犬イオン…。そういうのも有りか、だが個人的には猫はしか時のイオンの方が…。
とか言うのは置いといて、うまく戦えなかった自分に落ち込むイオン。日々鍛錬を積み、竜とさえやりあったことのある彼女ですし、今回もかなりの自信があったのでしょう。でも結果はあのありさま。落ち込むには十分な事態です。
しかしながら、イオンの真価はこの後で…、

(ここで悔しがってて何になる! そうだ…)
(教えてくれる人!)

この切り替え&立ち直りの早さ!そして自分の弱点を見つめ、足りないものを求める素直さ。これぞまさにイオン!ってな気持ちよさでした。何この娘かっこよすぎる。そりゃフィルやカイルも惚れるってもんだぜ。
この立ち直りシーンは個人的に13巻のハイライトでしたね。なんだか軽く涙腺緩んじゃったよ。


ACT.65 アカデミー騎士団5

「イ…イオン!? 何してる!?」
「カイル…! わっ、私ね!」

ついにカイルにも強さバレ。目をギューっとつぶって真っ赤になってるイオンが可愛らしい。強いって知ったくらいで幻滅なんてされるもんかー、とは読者視点ですが、すごい全力でバレを怖れてますよねイオン。これって寮監の「よき家柄の男子は淑やかでかわいらしい女子を好みますよ!」との繰り返しの教えの為なんだろうなあ。まさに呪い。
対してのカイルは驚きながらも事実を受け入れ、文句の付けようのない好対応でした。ほんと完璧超人だなコイツ。


「渦勁!」
うおお、凄まじい範囲攻撃だ。棍を持ったイオンはこんなことまで出来るのか…。タメが必要、たぶん体力も必要、ということで連発できるようなものでもなく使用箇所も限られるのでしょうが、それでも充分な威力。
イオンの天賦はエアライドだという言があったと思うのですが、そのイオンでもこれほどのことが出来るのだから、「地勁が計り知れない」とまで言われたDXはこれ以上のモノを使いこなせたりするのでしょうかね。レッセフェールからそんなもん出すDXは想像しづらいな…。


「ケガ人と…『全員』入った」
「わかった…。閉めろ!」
「えっ!?」
「騎士団! この扉を死守するぞ!」
「…ありがとう、君のおかげだ」
ルッカフォート将軍の名前が僕らに勇気をくれる。命を惜しまず戦える」
「本当の、騎士みたいに」

高位貴族の生徒と怪我人だけを寮内に入れ、扉を文字通り死守する構えの騎士候補生たち、呆然とするイオン。候補生たちの行動は完全に彼ら自身の意思によるものであり、彼らは悔やんだりしていないのは確かなことなのですが、それでも彼らが死地に立っていることは事実。そしてそれの最後の後押しになったのが、まぎれもないイオン自身のルッカフォートの名なんですよね…。彼女にはそんなつもりはなく、ただ戦ってみんなを助けたい、という思いしかなかったはずではありますが。彼女が参戦の意思を伝えた時にティ・ティが一瞬見せた狼狽はこのビジョンが見えていたからか(そしてそれをも利用しようとしている自分に自己嫌悪したからか)。
このシリーズは結局は死者もゼロでハッピーエンド!となるんですが、ココでもし死者でも出ていたら、と考えると複雑な気持ちすぎます。イオンが受けるダメージはどれほどになっただろう。このシチュエーションはキツすぎる。


しかし、マクディなどの「嫌なやつ」として普段描かれていたキャラも、ここ一番では真剣に騎士として働いているのを見ると胸が熱くなりますね。みんなやる時はやるんだね。劇場版ジャイアンだね。


ACT.66 アカデミー騎士団6
ACT.67 アカデミー騎士団7

指揮官職に疲労を隠せないティ・ティを悪口の応酬で元気付けてやるフィルに、落ち込んだイオンを優しく元気付けるチルダ&ソニア。形は違ってもどちらも仲良しさんなんですね。ほんと良い子らや…。


そしてチューターのダイイングメッセージ(笑)後の怒涛の展開が、疾走感出まくりの脳汁出まくり!
・ソニア&チルダの壁画ジェムへの気付き
・ティ・ティ小型化
・ティ・ティネットワーク混線
スピンドル侵入
・イオンの壁画破壊
・ルーディーの喚起
・子天馬の翼
スピンドル、接点へ
・「…静かやの」
これらの出来事がものすごい勢いで同時に進行していきます。スピード感も素晴らしいんですが、みんながみんなそれぞれ役割を持って動いてるってのが本当にイイなあー。どう見ても非戦闘要員だったソニア&チルダがある意味最重要なポイントにいたりしますしね。美しい。



ACT.68 ファンファーレ

(体が動かない…。僕はここで死ぬのか)
(誰かが僕を呼んでる…)
(頬に触れる柔らかいものは君のキス)

はいアホ1名さま入りましたー。夢の中でもキザで瀟洒な言い回しが抜けないあたり、カイルはナチュラル・ボーン・タラシさんなことは間違いないですね。ただその夢に出てきてるのが女装リドだというのが哀れというか愉快というか笑えるというかピエロというか…。強く生きろ。
イオンのことも強く気にかけていることは確かなようですが、言い回しからするとあくまで保護者的・見守る立場的な位置からの物言いですね。イオンはまだまだ報われないなあ…。いやそれでいいのだけど。イオンは六甲とDXのだし。


「…」
「穴」

スピンドルたちは塔最上階の壁画の穴に吸い寄せられるように消えていったとのこと。唐突に現れ、唐突に襲ってきて、唐突に去っていった、最後まで謎の多いモンスターでした。襲撃のきっかけなんかは次回のAct.69で明らかになるんですが、それまでは本当にハテナマーク乱舞なモンスターでしたからね。コミックス派で良かった…。本誌派で一ヶ月もお預けだったどうなってたことやら。
接点に戻るスピンドルたちに巻き込まれる形で穴に落ちたイオンを救っていたのは、かの子狐丸。「女子供を守ってくれる」とのお話から軽いお守りっぽいものを想像してたんですが、思ったよりずっと直接的なアイテムですねこりゃ…。でもファンタジー世界の「由緒あるお守り」といったらこれくらいは当然なのか。
「いいか…、助けるんだからな」「バチッとかくんなよー…」などと小刀相手にビビリまくりなフィルが可愛らしくて仕方ないです。無機物相手に下手に出て頼みごとするパピー・グレイ!


「市街地にもスピンドルが出たって。うちの様子見に帰んねーと」
「市街なら王城騎士団本隊が守ったんだ。アカデミーより安全だったはずだぞ」
「貴族共! 外周エリアに騎士団が来るわけねーだろ!」

フィルの返しに言葉を失い、涙を見せる候補生たち。経験豊富な騎士団本隊よりも、初心である騎士候補生たちの方がより「本来の騎士道精神」を体現しようとしている、というのは何とも皮肉なものですね…。議会での学長とのやりとりを見ていると切にそう感じます。もっとも、今回アカデミーに来てくれた隊長さんや旗を投げる将軍さん、ゼクスレン教官などなど、本物の騎士は数多くいるのでしょうけども。
候補生たちも「自分達が成人して議会に入ったら…」と心構えも新たにしていることですし、未来もそんなに悲観したものではなさそうです。


ACT.69 passege

「…で、天馬が飛んで、それから…?」
「もう話し疲れたー。お兄の方の話してよ」

急激に場面と時間は変わり、エカリープの実家の寝室へ。なんなんだこのイチャイチャピロートークは…! この兄妹のナチュラルな仲良しさんっぷりはいつ見ても相当に攻撃力があります。なんで普通に一緒に寝てんだよ。いいぞもっとやれ。


「お兄のかわりしたらわかった」
「俺のかわり? ふーん」
「思ってたのと違ったろ」
「………うん」

今回の襲撃事件で一番成長したのは、候補生でもなく、ティ・ティでもなく、イオンだったのかもですね。奇しくもウルファネア編でのDXと同じように「名前」の持つ力に悩まされる結果となったわけですが、今回の事件でその力をはっきりと認識し、また戦場においての自分の弱点もそれなりに意識できた様子。
しかしながら、姫という立場から考えるならば、それもこれも本来なら考える必要のないこと、という感もあるのですが。姫が戦場に立つことなんて本来なら「あってはならないこと」とされるんだろうしなあ。イオンが自分の立場に本格的に悩まされるようなことも、将来においてはあるのでしょうか。


Tailpiece

ネコミミ竜葵お兄ちゃん来たー! こりゃ(リドの鼻)血の雨が降るぜー!
と思ったら、コマ枠や建物でひたすら巧みに隠し、とうとう一度も耳を見ることは叶いませんでした。なにこの焦らしプレイ。「あんまり連発するとよさが薄れるからな」のかわうそ理論なのか。そうなのか。


今回のアンちゃんの茶菓話は比較的わかりやすいものでした。
指導者がカンペキすぎては人がついて来づらい、隙を見せろというわけでもないけれど、ツッコミや助言を受け入れてくれそうに見えるくらいがちょうどいい、とのこと。なるほど、確かに思い当たるケースもいろいろ考え付きますね。初期型雄山のことか…。
しかしこの指導者像、DXに対してはどうなんだろうなあ。DXの場合隙を見せるどころか隙のかたまりのような気もしないでもないですが、アンちゃん的にはいいのだろうか。「意見しやすい」「受け入れやすい」という点に関しては全力で頷けるところなのですけどね。