Landreaallランドリオール)、12巻よんだー。
せっかくなのでちょこちょこと感想なんか書いてみます。
需要はほぼゼロだろうけどな! 需要なんて見えやしねー。


ACT.58 失敗
「俺は第四位王位継承候補者…高第二位将軍の息子エカリープ領公子」
「ディクスン…DX・ルッカフォート!」

いきなりのクライマックス!「竜胆の兄・竜葵と戦うことになったが、竜葵の剣には全然敵わず、追い詰められたDXは己の身分を明らかにした――」とはあらすじからの引用ですが、要素だけを見るなら確かに無様とも情けないとも言える流れかもしれません。しかしながら、それによって主人公たるDXの人格は損なわれるかと言うなら、それは全くの「No」。なぜなら、読者は彼が権力・立場というものを好んでいないことは十分に知っているから。それを使わない方法を出来る限り試し、それでも立ち行かなくなり、これが事件解決に繋がる本当に最後の手段だったということを見てきたから。これまでに積み重ねてきた人格描写の完全勝利ですね。
それだけに、今まで嫌ってきた「立場」という武器を使わざるを得なかったDXの今後が気にかかるところではあります。精神的な意味でも、周囲の扱い的な意味でも。ああいや、しかし精神的とか言っても、DXのことだから別に使ったってこともそれほど気にはしないのかなあ。剣に「なるようになる」なんて名付ける人間ですし。


「リド…みんな誤解してる。どうしてこんなことになったんだよ」
「私は失敗した」
「ちゃんと言えよ。失敗なんかしてないって」

竜胆の望みはあくまで兄を助けることだけ、継承権なんかには全く興味がない、…ということはしっかりと伝わってきたのですが、この状態(竜脈に囚われ、死を待つのみの状態)をもって『失敗じゃない』と評するのはどういうことなんだろう…? 傍から見ればどう見ても失敗なだけにちょっとした違和感です。
あれかな、儀式が完全に成功して無事に戻れる事がベストではあったけど、荒れていた竜脈を自分の身で一時的にでも安定させているっぽい今の状況も、「兄のため」という意味で言うならベターではある、という意味か。竜脈が安定したならば後で儀式を行う兄もやりやすくなるでしょうしね。
何にしろ竜胆のこのお兄ちゃんラブっぷりは異常ですよ。この恥ずかし乙女!


ACT.59 The cat did it
「DXさまの要請を聞き入れてくださった見返りです」
「あなたの身上にケチをつけたければ(神剣を)引き抜いて行くこともできるんですよ」
「あの方はあなたに勝てなかったと考えておられる。私は違うのです」

アンちゃんの政治言葉トークが始まるとまず和訳と解釈から入らなければならないのが頭の痛いところです。ウルファネアまとめ編の3話(約90ページ)を読むだけで一時間とかかかるんだぜ…。いや、労力はかかるけど、それもとても楽しいので辛いとか苦しいとかいう感じではないんですけどね。
で、交渉の内容。DXが身分を盾に剣を引かせたことは、DX本人は「負け」と捉えてますが、アンちゃん的には普通に「勝ち」と捉えているのですね。「見返り」なんていう上から目線チックな表現を使っているのもここからかな。『継承候補の内政干渉』という分の悪そうな事実を持ち出されても、対等以上に話せているのが印象的です。
しかし「あなたの身上にケチをつけたければ〜」のくだりは少し難解すぎました。その後に「それでもあなたなら地竜を鎮めることはできるはず」と続くため、あれ?それならウルファネア側の脅威にはなってなくね?外交カードとして成り立ってなくね?と思ってしまったんですよね。ここは少しわからなかったなあ。「まあ何とかなるでしょうけどわざわざ面倒起こしたくないでしょ、ならわかるよね?」くらいのノリでいいのかな。


「アトルニアには王都周辺に風土病がありまして…」
ここで猫はしか!!
発病当初は「発病者はネコミミになる」というふざけた病だったために「またおがき先生の病気か…」なんて思ったものですが、ここで事態収拾のキーとして持ってくるとか、何その伏線の張り方! どこからどこまでを真面目に見てネタに見ればいいのか、本当に気の抜けない漫画だぜ…。ここは話の流れも見事で、アンちゃん・竜葵お兄ちゃんの難解トークが続いて、頭が疲れてきたかな、ってところにこのビジュアルインパクトですからね。破壊力高すぎる。
今回耳が出たのは五の一だけでしたが、五十四さんと戦ったのは竜葵さんも同じですし、お兄ちゃんにも同様にネコミミが生えてこないかが心配と同時に楽しみでなりません。この岩のような人にネコミミとかなあ…。リドはきっと鼻血吹くだろうけど。


ACT.60 夜の果て
ウルファネア編総まとめ。DXは形はどうあれリドを助け、リド・竜葵兄弟は互いに少しだけ歩み寄り、六甲は自分の意思というものを少しだけ身に付け、と、皆が何かを得た形でとても良い終わり方でした。
でもまあその中でも、今シリーズで最も得るものが大きかったのはやっぱりアンちゃんになるのかな。竜胆を助けることが第一義だったながらも(というより「竜胆を助けたいDXを助けること」か)、竜胆・五十四さんを二人揃って取り戻すことで得たDXの信頼、「権力嫌悪症(パワーフォビュア)」のDXが名前を武器として使ってくれた事実は、キングメーカーとしては非常に大きいものになるのでしょうね。もしかしたらウルファネアとのコネクションも得たものリストに入るものかも知れないですし。考えてみたらホント一人勝ちだなこの人…。


「夜の果ては、朝だよ」の締めがとっても素敵でした。このコマをたっぷり使った余韻。


ACT.61 アカデミー騎士団1
ところ変わってDX留守中のアカデミー編。イオンメインな話になるだろうしさぞかしぽややんとしたことになるんだろうな、と思ってたら何気にマジっぽくてビビりました。番外編や3巻の火竜以外ではほぼ出てきてなかった「モンスター」なる脅威要素まで出てくるマジっぷり。それにしても、12巻になって初めてしっかりとモンスターが出るファンタジー漫画ってのも、考えてみれば結構すごい話だよなあ。ファンタジー要素は他にもモリモリと詰め込まれてるので特に気になったりしませんでしたが。


それにしてもこのモンスター、10巻でDX達が空を移動中にすれ違ったものと似てる気がするのですが、それとは別に関係はないのかなー?? ちょっとだけ形が違う気もするし、あれとはまた別の種なのかな。アカデミー生徒に対して特別に敵意を持っているらしいあたりに何となく不自然さを感じるんですが、何となれば誰かが操って放ったものなのか、とも思ってしまいます、でも「モンスター」なるものが「そういうもの」(=人が制御・操作できるもの)なのかどうかがまだよくわからないんですよね(今までの露出が少ないので)。何とも言えん。
まさかDXがちょっかいかけたから怒ってる、なんてことないよなあ…?


ACT.62 アカデミー騎士団2
「この位置とこの位置…、こう繋がって…」
「ひとつの群れが…部分目視だけど40から50」
「一回で飛び上がるのは10フィートくらいで必ず一瞬止まって上か下に」

おおお、イオンが知的に見える…! アホの子身体能力に特化した子というイメージがあったので、こういった戦術会議的発言もこなせるのは意外すぎました。直後の「やっちゃった!」みたいなグルグル目も好感度高し。


「ティティ、今更だ」
「君にならみんな従う」

今回スポットライトが当たるのはティティでしょうか。立場的にも技能的にも指揮官ポジションに就ける人間が自分しかいないという状況で、将来の騎士団のプチシミュレーションのような形になるのかな。あまり乗り気ではない様子ながらも、各人の資質を把握した上での役割分けはとても鮮やか。シリーズが終わった後にどういう心境の変化があるのかなかなか楽しみです。
しかしライナスはぜんぜん目立ってねーなー。今んとこ超壁際の花。


ACT.EXTRA プチリオール
ずっとずっとイオンのターン!
この子が何か食べてる姿は死人が出るほど可愛いです。イオンがネタにされる時はたいてい食べ物ネタであり、すなわちイオンは常に可愛い。
「2番目に好きな味」としてフィル家のキャンディを選ばれましたが、この時のフィルの気持ちを想像するととてもニヤニヤできますね。憧れの子がスキだって言ってるよ、みたいな。でもイオンは六甲のだよ、みたいな。ニヤニヤ。